マンション管理組合の理事長になったら何をすべき?役割・仕事内容から注意点まで徹底解説

「理事長になったけれど、理事会や総会で何をすればいいの?」

「管理組合の業務や責任の範囲が分からず、不安」

「住民とのトラブルや管理会社との付き合い方が知りたい」

この記事では、こういった疑問や不安を抱える新任の理事長の疑問に答えます。

この記事でわかること

  • 理事長の基本的な役割と業務の全体像
  • 法律や規約に基づく権限と責任の範囲
  • 管理会社との適切な連携方法
  • 管理費滞納や騒音など、よくあるトラブルへの対応法

理事長は、マンション管理組合の代表者です。しかし、突然その役目が回ってくると、何から手をつければ良いか分からず戸惑ってしまいますよね。


この記事を読めば、理事長の業務の全体像から具体的な注意点までを体系的に理解し、安心して一歩を踏み出すことができます。

ポイントを押さえて、スムーズな組合運営を目指しましょう。

池田写真


この記事の監修者

株式会社デュアルタップコミュニティ 代表取締役社長
池田 秀人

2017年6月株式会社デュアルタップ入社、2017年10月株式会社デュアルタップコミュニティ設立(取締役就任)、2018年7月株式会社建物管理サービスの株式取得し、完全子会社へ(取締役就任)、2019年7月専務取締役に就任、2020年7月代表取締役に就任~現在に至る

所有資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

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マンション管理組合と理事長の基礎知識

基礎知識

理事長の役割を理解するためには、まずその舞台となる「管理組合」と「理事会」の仕組みを知ることが不可欠です。
基本的な関係性を整理しておきましょう。

マンション管理組合とは?加入は必須?

マンション管理組合とは、マンションの区分所有者全員で構成される団体のことです。
区分所有法という法律に基づき、分譲マンションを購入した人は自動的に組合員となります。
加入を選択する余地はなく、法律で定められた必須の仕組みです。

管理組合の主な目的は、エントランスや廊下、エレベーターといった共用部分や建物全体の維持管理です。
住民から集めた管理費や修繕積立金を元に、以下のような活動を行います。

  • 建物や設備の維持管理、定期点検
  • 管理規約や使用細則の運用・改定
  • 修繕積立金の管理と大規模修繕の計画・実施
  • 居住者間のトラブル調整


個人の力では対応できないマンション全体の課題に、組織として取り組むのが管理組合の役割です。

理事会の役割と仕組み

理事会は、管理組合の執行機関です。総会で選ばれた「理事」が集まり、日常的な運営や実務を進めます。

株式会社に例えるなら、全区分所有者が参加する「総会」が株主総会、そして「理事会」が取締役会に近い立場と考えると分かりやすいでしょう。

理事会の主な役割は次のとおりです。

  • 総会で決まった方針の実行
  • 管理会社との契約や日常業務の調整
  • 修繕計画や次年度予算案の作成
  • 住民からの要望や苦情の一次対応と整理


例えば、エントランスのオートロックが故障した場合、修理業者の選定や見積もりの確認は理事会が行います。
軽微な修繕であれば理事会の判断で完結し、多額の費用がかかる場合は総会に議案として提出します。
この仕組みにより、管理組合は効率的に運営されるのです。

理事長の立ち位置(理事・監事との違い、代表権・議長権限)

理事長は、管理組合の代表者であり、理事会のまとめ役です。理事や監事との違いを理解すると、その立ち位置が明確になります。

  • 理事:理事会の構成員。割り当てられた担当業務(会計、書記など)を遂行し、議案を審議する。
  • 監事:理事会の業務執行や会計状況を監査する役職。理事会に出席して意見を述べることはできますが、議決権はありません。
  • 理事長:管理組合を代表し(代表権)、業務全体を統括する。理事会の議長を務め、総会を招集して議事を進行する(議長権限)。


理事長は理事や監事より「偉い」わけではなく、あくまで役割が異なります。対外的(例:工事業者との契約)には組合の「顔」として、対内的には理事会や総会を円滑に進める「議長」としての特別な立場にあるのです。

理事長の仕事内容と業務範囲

業務範囲

理事長の仕事は会議運営から住民対応まで多岐にわたります。ここでは、主な5つの業務内容について具体的に見ていきましょう。

総会・理事会の招集と議長

理事長の最も重要な役割が、総会と理事会を主催することです。法律と管理規約に基づき、定期的に会議を開く責任があります。

  • 通常総会:年に1回開催。決算・予算の承認、事業計画の決定、役員の選任など、マンション運営の根幹に関わる重要事項を決議します。
  • 理事会:定期的に開催。住民からの要望、設備の不具合、清掃状況の確認など、日常的な課題を協議します。


理事長は開催通知の発送から当日の議事進行、意見の取りまとめ、決議の確認まで、会議全体をコントロールします。円滑な議事進行は、理事長の腕の見せ所と言えるでしょう。

会計・決算報告、議事録や書類の管理

管理組合のお金や決定事項を透明化し、記録として残すことも理事長の重要な業務です。

具体的には、毎年度の収支決算を監事の監査を経た上で総会に報告し、承認を得なければなりません。管理費や修繕積立金の収支が不透明だと、住民の不信感につながります。

また、総会や理事会で「何を話し合い、何が決まったのか」を証明するために、議事録を正確に作成・保管する義務があります。これらの書類は組合の公式な記録であり、住民からの閲覧請求に応じるのも理事長の役割です。

総会決議事項の執行と業務統括

総会で決まった事項を、計画倒れにせず実行に移すのが理事長の責務です。例えば、「大規模修繕工事を実施する」という決議がなされた場合、理事長が組合を代表して設計事務所や施工会社と契約を締結します。

もちろん、理事長一人で全てを進めるわけではありません。理事会で方針を確認し、他の理事と協力しながら業務を分担します。


そして、業務の進捗状況を定期的に理事会や住民に報告する義務も負います。決議を実務へ落とし込み、組合全体の運営を統括する司令塔の役割です。

住民対応とクレーム処理

騒音、ペットの飼育マナー、ゴミ出しルール違反など、住民間のトラブル対応も理事長が避けられない業務です。

苦情が寄せられた場合、理事長はまず当事者双方から冷静に話を聞き、事実確認を行います。感情的にどちらかの味方をするのではなく、必ず理事会に議題として取り上げ、組織として対応方針を決めることが重要です。


規約や過去の事例に沿って、公平な立場で調整役を務める姿勢が求められます。

関連記事:騒音をマンション管理会社に相談しても改善しない理由|騒音トラブルの元となる音も紹介

管理会社との連携と業務委託の判断

多くのマンションでは、日常の清掃、設備の保守点検、会計事務などを管理会社に委託しています。理事長は、この管理会社との主要な窓口役となります。

管理会社からの業務報告を受け、サービス内容をチェックし、問題があれば改善を指示します。

また、管理会社から提出された見積もりを精査し、理事会で承認を得た上で契約の可否を判断するのも理事長の役割です。管理会社に任せきりにすると、コストが割高になったりサービス品質が低下したりする恐れがあるため、理事長が主体的に監督する姿勢が大切です。

理事長に求められる責任と権限

責任と権限

理事長は組合の代表として、法律や規約に基づいた責任を負います。その範囲を正しく理解し、無用なトラブルを避けましょう。

区分所有法・標準管理規約に基づく責任

理事長の責任は、区分所有法や、マンション標準管理規約を確認する必要があります。法律上、理事長は「管理者」と位置づけられ、共用部分の保存や集会の決議を実行する義務を負います。

会計報告や事務報告を怠ったり、管理組合の財産を損なう行為をしたりすれば、規約違反や善管注意義務違反(善良な管理者の注意をもって職務を行う義務)に問われ、住民から責任を追及される可能性があります。任期中は、組合全体の利益を守るために誠実に職務を遂行することが求められます。

権限の範囲と制約(理事会・総会との関係)

理事長は代表権を持ちますが、理事長が単独で全てを決められるわけではなく、重要な事項は理事会や総会の承認が必要です。

例えば、大規模修繕工事の発注や管理規約の変更といった重要事項は、必ず総会での決議が必須です。理事長はその決定を実行する執行者に過ぎません。この仕組みによって、権限の集中や暴走を防ぎ、組合運営の透明性が保たれているのです。

怠慢のリスクと責任追及

理事長が業務を怠ると、管理組合に損害を与え、個人として責任を問われるリスクがあります。

  • 管理費滞納の放置:資金不足で修繕計画が遅れ、マンション全体の資産価値が低下する。
  • 設備の不具合の放置:事故が発生した場合、理事長の管理責任が問われ、損害賠償請求の対象となる可能性がある。
  • 住民トラブルの無視:問題が深刻化し、住民間の対立が激化する。


最悪の場合、他の区分所有者から訴訟を起こされ、損害賠償を命じられるケースもあります。これを避けるためにも、理事会で合意形成を図り、対応の記録を議事録として残しておくことが自身の身を守ることにもつながります

理事長印・代表権の取り扱い

理事長印は、管理組合の公式な印章であり、その取り扱いには細心の注意が必要です。契約書や銀行口座の手続きなど、この印鑑を使った行為は組合全体を法的に拘束します。


理事長が独断で理事長印を押印することは、不正行為やトラブルの元凶です。印鑑の使用は、必ず理事会の承認を得た上で行い、いつ・何のために・誰が押印したかを記録する「押印簿」を作成して管理するのが望ましいでしょう。

理事長のメリット・デメリット

メリット・デメリット

責任の重い役職ですが、その分得られるものもあります。一方で、負担も覚悟しなければなりません。メリット・デメリット両面を理解しておきましょう。

メリット(運営理解・住民信頼・資産価値維持)

理事長を務める最大のメリットは、マンション運営の全体像を深く理解できる点です。管理費がどのように使われ、どのような計画で建物が維持されているかを知ることで、自分の住まいに対する理解と愛着が深まります。


また、住民の要望に誠実に対応することで、「あの理事長は信頼できる」という評価を得られ、コミュニティ内での良好な人間関係を築くことができます。理事長の経験を通じて、マンションの資産価値を自分たちの手で維持・向上させているという実感とやりがいを得られるでしょう。

デメリット(時間負担・住民トラブル・精神的ストレス)

一方で、デメリットも存在します。まず、理事会や総会の準備、資料作成、住民対応などでプライベートな時間が削られることは避けられません。


さらに、住民間のトラブルの仲裁役となるため、板挟みになったり、時には理不尽な要求をぶつけられたりすることもあります。


公平な立場を保ちながら対応する必要があるため、精神的なストレスを感じる場面も少なくありません。理事会のメンバーと協力し、一人で抱え込まない体制を作ることが重要です。

よくあるトラブルと具体的な対応法

トラブル対応

ここでは、理事長が直面しやすい3つの典型的なトラブルと、その対応のポイントを解説します。

管理費滞納への対応

管理費の滞納は、組合の財政を直撃する深刻な問題です。対応は、段階的に進めるのが基本です。

  1. 書面による督促:まずは内容証明郵便などで督促状を送り、支払いを求めます。
  2. 理事会での協議:改善が見られない場合、理事会で弁護士への相談などを検討します。
  3. 法的手段:最終的には、支払督促や訴訟といった法的手段に移行します。区分所有法では、競売請求も認められています。


最初から強硬な手段に出ると関係が悪化するため、まずは分割払いの提案など、相手の事情も聞きながら柔軟な解決策を探る姿勢も大切です。

騒音・生活トラブル

子供の足音や楽器の音など、生活音をめぐるトラブルは対立に発展しがちです。理事長は一方の意見だけを鵜呑みにせず、客観的な事実確認に努める必要があります

  • 双方から時間をずらして、冷静に話を聞く。
  • 必要であれば、騒音計で音の大きさを測定する。
  • 理事会として、全戸にマナー向上を呼びかける文書を配布する。


過去の裁判では、社会生活を送る上で我慢すべき限度を超えているかが争点になります。感情的な対立を避け、客観的な基準をもとに冷静な調整を行うのが理事長の役割です。

住民からの理不尽なクレーム対応ポイント

「自分の部屋の前に駐車場を移動してほしい」といった個人的な要求や、規約上問題のない行為に対する過剰なクレームなど、理不尽な要求への対応は精神的に疲弊します。

対応のポイントは、一人で対応せず、必ず「理事会」という組織で対応することです。

  • その場ですぐに回答せず、「理事会で検討し、後日回答します」と伝える
  • 複数人(他の理事など)で話を聞くようにし、感情的な衝突を避ける。
  • 議事録に対応の経緯を記録として残す


誠実な姿勢で受け止めつつも、できないことは毅然と断る勇気も必要です。集団で判断することが、特定の個人への攻撃を避けるための手段となります。

任期・報酬・辞退のルール

ルール

最後に、理事長の任期や交代に関するルールを押さえておきましょう。

任期の基本(1〜2年の輪番制)と報酬

理事長の任期は、管理規約で1年または2年と定められている場合がほとんどです。多くのマンションでは、役員を輪番制(持ち回り)で選び、特定の人に負担が集中しないように配慮されています。


報酬については、基本的に無報酬(ボランティア)です。組合員としての共同義務という考え方が根底にあります。ただし、一部の大規模マンションや業務が非常に多い組合では、総会の決議を経て、理事長や役員に月数千円〜数万円程度の手当や謝礼が支払われるケースもあります。

辞任・辞退は可能か?

健康上の理由や長期の海外転勤など、やむを得ない事情がある場合は、理事会や総会で承認を得て任期の途中で辞任することが可能です。


ただし、「負担が重いから」「面倒だから」といった理由だけでは、辞任が認められないこともあります。辞任が認められた場合は、副理事長などが職務を代行し、次の理事会で後任者が選出されるのが一般的です。

担い手が見つからない場合の選択肢

近年、住民の高齢化やライフスタイルの多様化により、役員のなり手不足が深刻な問題となっています。もし輪番制が機能しなくなった場合は、「外部管理者方式(第三者管理方式)」という選択肢もあります。


これは、マンション管理士などの専門家や外部法人に、理事長や理事会の業務を委託する仕組みです。専門知識に基づいた効率的な運営が期待できる一方、費用が発生し、住民の管理への関心が薄れるというデメリットもあります。

関連記事:マンション管理組合から脱退はできない|その理由と役職について解説

まとめ|理事長の仕事は大変だが、ポイントを押さえれば乗り越えられる

理事長は大変

最後に、この記事の内容を振り返っておきましょう。

  • 理事長は管理組合の代表者であり、総会や理事会のまとめ役
  • 主な仕事は会議運営、会計報告、住民対応、管理会社連携など
  • 独断での決定はせず、必ず理事会や総会で合意形成を図ることが鉄則
  • 管理費滞納や騒音トラブルには、冷静かつ段階的に対応する
  • 一人で抱え込まず、他の役員や管理会社と協力することが何よりも大切


理事長に求められるのは、完璧さよりも誠実さです。住民の声に耳を傾け、課題解決に向けて真摯に取り組む姿勢が、組合員からの信頼につながります。この記事を参考に、自信を持って理事長としての第一歩を踏み出してください。

  • 「管理費が高い気がするけど、何に使われているのか不透明…」
  • 「将来の大規模修繕、計画通りに進むのか不安…」
  • 「管理会社に連絡しても、なかなか対応してくれない…」

マンション管理への不満は、住民の満足度低下に直接つながります。些細なことと感じても、積み重なると住み心地が悪くなる可能性があるでしょう。

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