大規模修繕の周期は12年~15年|その理由と工事期間中の制限事項について解説
「マンション大規模修繕の適切な周期が知りたい」
「大規模修繕の費用が知りたい」
などとお考えではありませんか?
大規模修繕の目安を知らないと、費用が高くなる可能性があります。
本記事では、マンション大規模修繕工事が12年~15年サイクルといわれている3つの理由と併せて、大規模修繕工事期間中の制限事項について解説します。
最後まで読むと、工事期間中の正しい過ごし方がわかります。
この記事の監修者
株式会社デュアルタップコミュニティ 代表取締役社長
池田 秀人
2017年6月株式会社デュアルタップ入社、2017年10月株式会社デュアルタップコミュニティ設立(取締役就任)、2018年7月株式会社建物管理サービスの株式取得し、完全子会社へ(取締役就任)、2019年7月専務取締役に就任、2020年7月代表取締役に就任~現在に至る
所有資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
目次
大規模修繕の周期は12年~15年
一般的に、大規模修繕の周期は12年~15年とされています。
たとえば、大規模修繕工事の1つである外壁塗装の工事周期の目安は12年~15年とされています。
屋上防水、バルコニー床防水工事の周期は12年です。
新築から12年目に屋上防水、バルコニー床防水工事のみ実施し、その3年後に外壁塗装を行うのは効率が悪いといえます。
別で発注するため費用が高くなり、発注の手間も増えます。
具体的には、以下の費用がかかってしまいます。
- 現場人件費
- 資材置場
- 仮設材
- 業者用駐車場
工事を行ううえで基礎的な費用が増えてしまいます。
以上のことから、多くのマンションでは、これらの工事を大規模修繕工事の際にまとめて実施するように計画しています。
しかし、工事対象箇所が劣化していないのに大規模修繕工事を行うのは合理的とはいえません。
たとえば、塩害が予想される海辺と、雨も日照も標準的な地域では、建物の経年劣化の度合いに大きな差が出ます。
12年~15年周期を基本に考え、建物の状態によって工事時期を調整することがポイントです。
2回目以降の大規模修繕を行う時期
大規模修繕工事の周期は12年~15年が目安です。
そのため、2回目の大規模修繕工事は30年過ぎたころに行うのがよいでしょう。
国土交通省が発表している長期修繕計画のガイドラインのサンプルでは、25年目に2回目の大規模修繕工事を計画しています。
2022年4月に始まった管理計画認定制度の認定基準に「長期修繕計画の計画期間が30年以上であり、同時に残りの期間内で大規模修繕工事が2回以上行われるよう設定されている」と記載があります。
参照:国土交通省「長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン」
マンション大規模修繕工事が12年~15年サイクルといわれている3つの理由
マンション大規模修繕工事が12年~15年サイクルといわれている3つの理由は以下のとおりです。
- 「長期修繕計画作成ガイドライン」の影響
- 塗膜などの劣化を考慮している
- 特殊建築物等定期調査の全面打診調査の義務化
順番に解説します。
【理由①】「長期修繕計画作成ガイドライン」の影響
「長期修繕計画作成ガイドライン」は、マンションの大規模修繕をどのように進めていくのかが記載されているものです。
このガイドラインが公開された平成20年には、「外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期が12年です。」と定められていると説明するような管理会社や設計事務所、大規模修繕工事の施工会社がありました。
しかし実際には、このガイドラインで掲げられた修繕周期は、「中高層単棟型のマンションの一般的な仕様や工法を想定し、関係する既存文献を参考にしておおよその目安として設定したものです。マンションの仕様、立地条件等に応じて修正します。」と記載されているだけです。
以上のことから、12年~15年でも大規模修繕の実施を定めていたり推奨していたりすることはありません。
【理由②】塗膜などの劣化を考慮している
マンションに使用される塗料の寿命は約8年、長持ちして12程度といわれています。
12年以上経過した塗料は以下のような状態になります。
- 浮き
- ひび割れ
- 結露
- 欠損
これらが進行し、コンクリート躯体を十分に保護できない状態になります。
同じマンションを12年で大規模修繕する場合と15年で大規模修繕する場合では、15年周期の方が次の修繕までの間隔が長くなってしまいます。
そのため、劣化が進んでいる可能性が高く、結果的に修繕費用が高額になる可能性が高いでしょう。
【理由③】特殊建築物等定期調査の全面打診調査の義務化
平成20年4月1日に改正された建築基準法によって、竣工・外壁改修後10年を経た建築物は、10年を超えた最初の調査の際に全面打診等による調査を行うことが義務化されました。
全面打診調査とは、外壁タイルやモルタルの表面をテストハンマーや打診棒などの検査器具を使って、浮きの有無を調べる方法です。
3年以内に外壁改修が行われる見込みの場合は、全面打診調査の実施の猶予を受けられます。
全面打診調査を行うには仮設足場が必要になるため、大規模修繕を実施した方が割安になるという理由で、12年~15年目に大規模修繕を実施することを進めている管理会社もあります。
関連記事:マンション大規模修繕が必要な理由|工事内容やかかる費用の相場も解説
部位ごとの大規模修繕の目安
部位ごとの大規模修繕の目安は以下のとおりです。
- 傾斜屋根(カラーベスト)
- 陸屋根・ルーフバルコニー
- 外壁(モルタル・サイディング・パネル)
- 外壁(タイル・コンクリート打放し)
順番に解説します。
傾斜屋根(カラーベスト)
傾斜屋根(カラーベスト)の塗装は、11~15年目を目安に修繕します。
傾斜屋根の確認ポイントは以下のとおりです。
- 塗膜の劣化による色あせの有無
- 屋根表面にコケやカビなどの発生の有無
- 素地自体が変形・ゆがみを起こし、雨漏りなど発生していないか
陸屋根・ルーフバルコニー
陸屋根・ルーフバルコニーの塗装は、11~15年目を目安に修繕します。
防水処理は、21~25年目を目安に修繕します。
陸屋根・ルーフバルコニーの確認ポイントは以下のとおりです。
- 防水面の膨れや亀裂、シーリングの劣化
- バルコニー下、軒天部などにくすみやシミの有無
- トタン系の場合、錆の発生やボルトキャップの劣化
外壁(モルタル・サイディング・パネル)
外壁(モルタル・サイディング・パネル)の塗装は、11~15年目を目安に修繕します。
外壁(モルタル・サイディング・パネル)の確認ポイントは以下のとおりです。
- 塗膜が粉状態になっていないか
- コケやカビなどが発生していないか
- クラック(ひび割れ)が発生していないか
外壁(タイル・コンクリート打放し)
外壁(タイル・コンクリート打放し)の貼り替え・塗装は、11~15年目を目安に修繕します。
外壁(タイル・コンクリート打放し)の確認ポイントは以下のとおりです。
- タイルの目地部分の欠損の有無
- 雨水汚れやコケ・カビの発生の有無
- 打診点検や赤外線を使った点検で、割れや浮きがないか
大規模修繕工事期間中の制限事項
大規模修繕工事期間中の制限事項は以下のとおりです。
- ニオイの発生
- 騒音・振動の発生
- バルコニーでの洗濯物干し制限
順番に解説します。
【制限事項①】ニオイの発生
大規模修繕工事では、塗料や防水材などを使用するため、ニオイが発生する場合があります。
そのため、嗅覚が敏感な方は気分が悪くなる場合があります。
対策としては、作業をしているエリアから離れた場所の窓を開け、換気をしましょう。
そうすることでニオイを軽減できます。
【制限事項②】騒音・振動の発生
大規模修繕工事は、マンションの外壁やバルコニー、廊下などの共用部分をすべて修繕します。
そのため、以下のような作業が発生します。
- 足場を建物外部に組み立てる作業
- 壁つなぎと呼ばれる足場を外壁などへ固定されるためにドリルで穴をあける作業
足場に限らず、多くの作業で騒音・振動が発生します。
作業中はテレビの音や電話の音が聞こえにくくなるでしょう。
【制限事項③】バルコニーでの洗濯物干し制限
場合によっては、バルコニーでの洗濯物干し制限になるでしょう。
塗料の飛散や粉じんの発生が考えられる場合には、洗濯物が汚れてしまうためバルコニーへの洗濯物干し制限がかかります。
しかし、大規模修繕工事期間中ずっと洗濯物が干せないというわけではありません。
その日の作業状況によって洗濯物干しできるかが変わってきます。
工事用掲示板で、その日の作業内容を確認し、洗濯物を外へ干せるかどうか確認しましょう。
マンション大規模修繕の相場
もっとも多い割合は「100万円〜125万円」の工事金額です。
一戸あたり100万円〜125万円の修繕費用がかかると考えられます。
100戸の大規模マンションにおける、大規模修繕費用の目安は「1億円〜1億2,500万円」です。
30戸の小規模なマンションの大規模修繕費用の目安は、3,000万円〜3,750万円です。
しかし、これらの金額はあくまでも目安であり、マンションの状態や工事内容によって費用が大きく異なります。
参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
【マンション大規模修繕】全体像を把握するポイント
全体像を把握するポイントは以下のとおりです。
- 目的を明確にする
- 組合員の合意を得る
- 工事費用を確保する
順番に解説します。
【ポイント①】目的を明確にする
建物の現状を把握したうえで以下の目的を明確にしましょう。
- マンション全体の安全性の確保
- 資産価値の維持
- 製品関連耐用年数
組合員の合意を得るためにも目的を明確にすることは大切です。
【ポイント②】組合員の合意を得る
大規模修繕は、組合員の財産を守るために行うことです。
そのために組合員の合意を得ることは絶対条件となります。
工事の実施は総会で決定しますが、そのための検討事項や決議内容はその都度、組合員に周知させる必要があります。
【ポイント③】工事費用を確保する
工事費用の確保は大切です。
前提として工事費は修繕積立金の範囲内で済ませたいものです。
しかし、過去に作成された長期修繕計画書の修繕積立金と、建物の現状を照らし合わせるとズレが生じることが多く見受けられます。
修繕積立金では足りない場合、一時金の徴収や借入により、工事費用を確保する必要があることも視野に入れましょう。
参考:一般社団法人マンション大規模修繕協議会「マンション大規模修繕の流れ」
まとめ【マンション大規模修繕工事が12年~15年といわれている理由を理解しましょう】
今回は、マンション大規模修繕工事が12年~15年サイクルといわれている3つの理由と併せて、大規模修繕工事期間中の制限事項について解説しました。
マンション大規模修繕工事が12年~15年サイクルといわれている3つの理由は以下のとおりです。
- 「長期修繕計画作成ガイドライン」の影響
- 塗膜などの劣化を考慮している
- 特殊建築物等定期調査の全面打診調査の義務化
それぞれの理由を理解したうえで、大規模修繕工事を迎えましょう。
「マンション管理会社変更したいけど、やり方がわかんない……」
「今のマンション管理会社に不満がある……」
こういった悩みはありませんか?大切なことなので慎重になり、なかなか自分では動けませんよね。
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