【マンション大規模修繕】とは経年に伴い劣化したマンションを定期的に修繕すること

マンションの大規模修繕は、住み心地を向上させるだけでなく、不動産価値を保つためにも不可欠です。

しかし、計画の立て方や費用、進行管理に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?

この記事では、大規模修繕の必要性から、実際のプロジェクトがどのように進むか、さらには修繕工事を成功させるコツまで、具体的な情報をわかりやすく解説しています。

これを読めば、大規模修繕を前向きに捉え、計画的に進めるための自信と解決策が手に入ります。

大切なマンションを長期間守り続けるための第一歩を、ぜひこの記事から始めてみてください。

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この記事の監修者

株式会社デュアルタップコミュニティ 代表取締役社長
池田 秀人

2017年6月株式会社デュアルタップ入社、2017年10月株式会社デュアルタップコミュニティ設立(取締役就任)、2018年7月株式会社建物管理サービスの株式取得し、完全子会社へ(取締役就任)、2019年7月専務取締役に就任、2020年7月代表取締役に就任~現在に至る

所有資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

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マンション大規模修繕とは

マンション大規模修繕とは

大規模修繕とは、経年に伴い劣化したマンションを定期的に修繕することです。

普段実施するのが難しい、建物の躯体を維持するための修繕や共用部分の改修を行います。

建物の安全と資産価値を保つために、大規模修繕は欠かせません。

対象となるのは主に共用部分ですが、大規模修繕工事は工期が長く、費用が高くなるため、計画をもって行うことが大切です。

「修繕」と「改修」の違いとは

修繕とは

「修繕」とは、建物が建てられた時の水準まで、機能や性能を回復させることを目的とした工事です。

劣化している箇所や不具合が発生している箇所は、修繕などを行い、問題なく利用できる状態に持っていきます。

マンションの場合は、日常で発生した不具合を修繕するための「小規模な修繕工事」があります。

小規模な修繕工事とは別に、建物全体の維持管理を目的とした大掛かりな計画修繕を行うことを「大規模修繕工事」といいます。

改修とは

「改修」とは、建物全体の機能・性能面をさらに進化させて、住みやすいマンションにしていくことが目的です。

建設時から年月が経つと、周辺の環境や暮らし方も変化していきます。

さらに、設備の進歩により、建物の性能や居住性も大きく向上していきます。

修繕だけでは、マンションを維持するための性能回復しかできません。

そのため、改修工事では修繕による機能回復に加えて、設備や性能のレベルを上げて、現在の水準に見合うようなマンションに進化させます。

マンションの資産価値の維持向上にもつながります。

関連記事:「マンション自主管理」とは管理会社には委託せずに管理組合自身で管理する方式

マンションの大規模修繕が必要な理由

マンションの大規模修繕が必要な理由

マンションの大規模修繕が必要な理由は以下のとおりです。

  • 建物の設備は劣化するため
  • 資産価値を守るため

順番に解説します。

【マンションの大規模修繕が必要な理由①】建物の設備は劣化するため

建物の設備は劣化するため、大規模修繕が必要です。

新築マンションでも、年数が経過するにつれて、さまざまな部分が汚れたり、傷んでくるのはしかたありません。

外壁や屋根は雨風や紫外線にさらされるため、乾燥によるひび割れやタイルの剥がれなどが発生してしまいます。

こういった劣化箇所を定期的にメンテナンスすることが、大規模修繕の目的です。

劣化により修繕が必要になりやすい箇所は以下のとおりです。

共用部分

  • 外壁
  • 屋根
  • バルコニー
  • 手すり
  • 給排水配管
  • エレベーター
  • 共用廊下・階段
  • エントランス
  • インターホン
  • 宅配ボックス
  • 機械式駐車場
  • フェンス

個人使用が認められている共有部分

  • 玄関扉(外側)
  • サッシ
  • バルコニー
  • 玄関ポーチ
  • 1階の専用庭
  • 専用使用駐車場
  • トランクルーム

【マンションの大規模修繕が必要な理由②】資産価値を守るため

資産価値を守るために大規模修繕を行います。

マンションの資産価値が落ちると、将来的に売却や賃貸として貸し出すときに、価格や家賃を下げざるを得なくなってしまいます。

大規模修繕工事を行わないまま、マンションの建物の経年に伴う劣化を放置すると、雨漏りや設備故障により、生活に支障をきたします。

また、見た目が悪くなったり、イメージダウンしたりとよいことはありません。

このようなことを防ぐためにも、大規模修繕は非常に大切になります。

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マンション大規模修繕にかかる費用の相場

マンション大規模修繕にかかる費用の相場

国土交通省の調査(令和3年度実施)によると、戸あたり工事金額は「100〜125万円/戸」の割合がもっとも高くなっています。

その次に75〜100万円/戸、125〜150万円/戸となります。

工事回数別に見ると、1回目は4,000〜6,000万円の割合がもっとも高くなっています。

2回目は6,000〜8,000万円、3回目以上は6,000〜8,000万円、10,000〜15,000万円の割合がもっとも高くなっています。

出典:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省)

マンション大規模修繕の工事内容

マンション大規模修繕の工事内容

マンション大規模修繕の工事内容は以下のとおりです。

  • 仮設工事
  • 下地補修
  • タイル補修
  • シーリング工事
  • 塗装工事(外壁・鉄部)
  • 防水工事

順番に解説します。

仮設工事

仮設工事では以下の2つの工事があります。

  • 直接仮設工事
  • 共通仮設工事

順番に解説します。

直接仮設工事

直接仮設工事では、大規模修繕工事を行うために必要な「足場の設置」をします。

内容としては、建物の周りに足場を建てて、その周りをメッシュシートで覆います。

メッシュシートで覆う理由としては、工事中に塗料が飛散したり、材料が外部へ落下するのを防ぐためです。

工事中も安全に通行ができるよう、出入り口や通路の頭上に防護棚を設置したり、侵入者対策にカメラやセンサーライトを取り付けたりします。

本工事に入る前には、住居者や建物周囲の安全を守るため、さまざまな安全・防犯対策を講じます。

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共通仮設工事

共通仮設工事は、主に以下の仮設設備を設置します。

  • 事務所や作業員の休憩所
  • 資材置き場
  • 仮設トイレ

仮設設備では、必要な電気や水道などのインフラやインターネット環境、事務所で必要な電話・コピー機・パソコンなどの機器を備える工事も含まれています。

下地

下地補修は、コンクリート構造物の損傷部分、特にひび割れなどの部分を修復する工程です。

この工程はまず建物の天井や壁などを視覚的に検査し、さらに打診検査を行い、コンクリートの状態を把握することから始まります。

ひび割れの原因は多様で、気候の変化や構造的な問題によって異なるため、適切な修復方法を選ぶ必要があります。

一般的な方法には、ポリマーセメントペーストやエポキシ樹脂を使ってひび割れを埋めることが含まれます。

また、状況に応じて、ひび割れに沿って溝を掘り、シーリング材を充填する方法もあります。

内部の鉄筋が錆びている場合は、周辺のコンクリートも弱くなっているため、より大規模な修復作業が必要です。

これには、損傷したコンクリートの撤去、鉄筋の錆除去、そして新しいコンクリートでの埋め戻しが含まれます。

このように、ひび割れの修復はもちろん、他の劣化症状の修復においても、下地の状態は仕上がりや建物の寿命に大きな影響を及ぼすため、状況の正確な評価と適切な修復方法の選択が重要です。

タイル補修

タイルが張られたマンションのメンテナンスでは、コンクリートの基礎部分のみならず、タイル自体の状態も重要です。

タイルの問題には、ひび割れや欠けが発生することに加えて、タイルが下地から離れてしまう「浮き」という現象もあります。

この浮きが進行すると、タイルが壁から剥がれ落ち、通行人に危険をもたらす可能性があるため、速やかな対処が必要です。

タイルの浮きを修復する一般的な方法は、接着剤を注入してタイルと下地の間の接着力を回復させることです。

ただし、問題の範囲が広い、または下地自体が損傷している場合には、タイルの再貼り付けが必要になることがあります。

また、タイルを貼る際には、コンクリートの基礎面を粗めに仕上げることで、タイルが将来的に剥がれにくくなるという利点があります。

シーリング工事

シーリング工事は、建物の窓枠周辺や外壁、タイルの継ぎ目に使用されているシーリング材を交換する作業です。

ゴムのような柔軟性を持つシーリング材は、時間が経つにつれて硬化し、その結果、防水性や気密性が低下します。

シーリング材の劣化によって隙間が生じると、雨水などが建物の内部に侵入し、水漏れや建物自体のダメージを引き起こす原因となります。

重要なのは、接合部の材質に適したシーリング材を選択することで、これにより効果的な修理と長期的な保護が実現されます。

塗装工事(外壁・鉄部)

塗装工事には以下の2種類の工事があります。

  • 外壁塗装工事
  • 鉄部塗装工事

順番に解説していきます。

外壁塗装工事

外壁塗装の工程では、最初に塗装面の現状を把握するために、下地と既存の塗膜の付着状況を確認します。

この付着力が十分にある場合は、既存の塗膜の上に新たな塗料を重ね塗りします。

付着力が不十分な場合は、既存の塗膜が剥がれるリスクを避けるために、一旦塗膜を除去してから新しく塗り直す必要があります。

塗装には、シリコン塗料やフッ素塗料などが使用されることがあり、これらの塗料を均等に適量塗ることは、塗装効果を最大化するために重要な工程です。

鉄部塗装工事

鉄部塗装の工事では、錆や腐食と戦うために、特に錆止め塗料の適用が重要です。

この工事は、鉄製のドア、階段、メーターボックスなどの鉄製部分に行われます。

錆をサンドペーパーで慎重に取り除くことは、この工程で特に重視されるべきポイントです。

この手順を入念に行うことで、錆の再発を防ぎ、塗料の密着を強化することが可能になります。

適切に下処理を施した鉄部には、錆止め塗料を始め、中間層の塗装、そして最終的な仕上げ塗装を施し、その保護性を強化します。

防水工事

建物の長期的な耐久性を維持するためには、雨水などがコンクリートの内部に浸透するのを避けることが不可欠です。

防水工事は特に、屋根や外部階段、バルコニーなど、雨風に直接晒される部分に集中して実施されます。

屋上やルーフバルコニーなどの箇所は、劣化が進むと室内への水漏れの原因となり得るため、居住者の生活環境を保護するためにも定期的なメンテナンスが求められます。

防水工事においては、アスファルト、ウレタン、塩化ビニル樹脂シートといった様々な防水素材が使用されます。

これらの素材はそれぞれ異なる特性を持っており、補修時には、劣化の程度や既存の防水層との相性を考慮して、適切な素材や施工方法を選ぶことが重要です。

マンションの大規模修繕はどう行われるのか?

マンションの大規模修繕はどう行われるのか?
  • 大規模修繕委員会を発足する
  • 劣化状況を調査する
  • 大規模修繕の方針を決定する

順番に解説します。

大規模修繕委員会を発足する

通常、大規模修繕の予定が近づくと、マンションの管理組合は修繕委員会への参加を組合員に呼びかけます。

この委員会には、修繕積立金を支払うマンションの区分所有者なら誰でも参加する資格があります。

大規模修繕委員会は、通常、管理組合の中で理事会とは別に設立され、理事会の下部組織として機能します。

しかし、委員会の設立に必要な参加者が集まらない場合や、管理組合が委員会の設置を不要と判断した場合は、通常の運営形態を取ります。

この状況では、マンションの管理組合は理事会を中心に、マンションの管理会社と協力しながら大規模修繕の方針や計画を策定します。

計画案や予算の作成は、主にマンション管理会社に依頼されることになります。

劣化状況を調査する

大規模修繕プロジェクトを開始する前に、マンションの「建物調査」が不可欠です。

この調査では、建物全体および共用設備の現状を把握し、劣化している箇所や改修・更新が必要な箇所を特定します。

業者は、これらの箇所に対する最適な修繕方法を提案し、その見積もりを含む報告書や提案書を作成します。

時には、特定の箇所の修繕や更新方法の提案だけを依頼することもあります。

このような建物調査は、大規模修繕に特化したコンサルタント会社、建設会社、またはマンションの施工会社によって実施されます。

大規模修繕委員会は、どの会社に調査を依頼するかを慎重に決定する役割を担います。

提案内容と調査結果に基づき、大規模修繕の予算が算出されるため、この選択は非常に重要です。

通常、複数の見積もりを比較検討して、調査の依頼先を選びます。

大規模修繕の方針を決定する

建物調査を通じて建物の現状が明らかになった後、次のステップとして大規模修繕の具体的な方針と計画の策定に移ります。

大規模修繕計画が既に存在する場合、その計画に基づき大規模修繕委員会は提出された建物調査の結果、提案書、そして見積もりを元に、どの部分をどのように修繕や更新するか、そしてそのための予算を詳細に議論します。

もし計画に割り当てられた資金が不足している場合、予算内で対応可能な修繕箇所に焦点を絞ることが一般的です。

しかし、緊急で対応が必要な修繕箇所がある場合には、追加の一時金を徴収することも検討されることがあります。

関連記事:「老朽化マンション」は築年数が経過し、劣化の進んだマンションのこと

マンション大規模修繕中の生活へ影響

マンション大規模修繕中の生活へ影響

大規模修繕中の生活への影響は以下のとおりです。

  • 部屋の中が見えてしまうこともある
  • においや粉じんが発生することもある
  • バルコニーに荷物を置けないことがある
  • 一時的にマンション内廊下や階段が使えなくなることもある

順番に解説します。

部屋の中が見えてしまうこともある

工事中、バルコニーに設置される足場を通じて作業員が出入りするため、日中、部屋の中が外から見えることがあります。

プライバシーを保ちたい場合は、日中も厚手のカーテンを閉めておくと良いでしょう。

また、足場を利用した不審者の侵入リスクもあるため、窓の施錠をしっかりと行うことが重要です。

においや粉じんが発生することもある

工事中には塗料の匂いや粉塵が発生することがありますので、次のような予防策を講じることが推奨されます。

  • バルコニーでの洗濯物干しを控える
  • 網戸を取り外して室内へ保管する
  • マンションの敷地内に駐車場がある場合、車を一時的に他の場所に移動させるか、カバーを使って汚れから保護する

これらの対策により、工事の影響を最小限に抑えることができます。

バルコニーに荷物を置けないことがある

大規模修繕工事が始まる前には、バルコニー上の植木鉢、物干し竿、その他のアイテムを移動させることが必要です。

荷物の一時的な保管場所としてトランクルームやレンタルコンテナの利用が必要になる場合もありますので、事前に準備を進めることを推奨します。

一時的にマンション内廊下や階段が使えなくなることもある

マンションの廊下や階段が工事中の場合、いつもとは異なる経路を通るよう指示されることがあります。

そのため、通常の通勤や通学時間よりも余分に時間がかかる可能性があるので、これを考慮して早めに出発することが賢明です。

大規模修繕の周期は12年~15年

大規模修繕の周期は12年~15年

一般的に、大規模修繕の周期は12年~15年とされています。

たとえば、大規模修繕工事の1つである外壁塗装の工事周期の目安は12年~15年とされています。

屋上防水、バルコニー床防水工事の周期は12年です。

新築から12年目に屋上防水、バルコニー床防水工事のみ実施し、その3年後に外壁塗装を行うのは効率が悪いといえます。

別で発注するため費用が高くなり、発注の手間も増えます。

具体的には、以下の費用がかかってしまいます。

  • 現場人件費
  • 資材置場
  • 仮設材
  • 業者用駐車場

工事を行ううえで基礎的な費用が増えてしまいます。

以上のことから、多くのマンションでは、これらの工事を大規模修繕工事の際にまとめて実施するように計画しています。

しかし、工事対象箇所が劣化していないのに大規模修繕工事を行うのは合理的とはいえません。

たとえば、塩害が予想される海辺と、雨も日照も標準的な地域では、建物の経年劣化の度合いに大きな差が出ます。

12年~15年周期を基本に考え、建物の状態によって工事時期を調整することがポイントです。

まとめ【マンションの大規模修繕が必要な理由を理解しましょう】

今回は、マンション大規模修繕が必要な理由と併せて、「修繕」と「改修」の違いやマンション大規模修繕にかかる費用の相場、工事内容について解説しました。

マンション大規模修繕が必要な理由は以下のとおりです。

  • 建物の設備は劣化するため
  • 資産価値を守るため

費用や期間はかかりますが、マンションの大規模修繕を行うことは非常に大切です。

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