マンション大規模修繕工事の期間は3ヶ月~8ヶ月|流れや注意点についても解説

「マンション大規模修繕の工事期間が知たい」

「大規模修繕の流れが知りたい」

「マンションの大規模修繕時の注意点ってなんだろう」

などとお考えではありませんか?

結論、マンション大規模修繕工事の期間は3ヶ月~8ヶ月です。

本記事では、工事期間の概要と併せて、大規模修繕の流れやマンションを大規模修繕する費用の相場、マンションの大規模修繕時の注意点について解説します。

池田写真


この記事の監修者

株式会社デュアルタップコミュニティ 代表取締役社長
池田 秀人

2017年6月株式会社デュアルタップ入社、2017年10月株式会社デュアルタップコミュニティ設立(取締役就任)、2018年7月株式会社建物管理サービスの株式取得し、完全子会社へ(取締役就任)、2019年7月専務取締役に就任、2020年7月代表取締役に就任~現在に至る

所有資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

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マンションの大規模修繕とは?

マンションの大規模修繕とは?

大規模修繕工事は、建物の経年による劣化を防ぎ、安全性と機能性を維持するために不可欠です。

特に、マンションの場合、建築基準法に基づいて建てられており、初期の耐震性や防水性が保証されているものの、時間が経過するとともにこれらの機能も低下します。

分譲マンションでは、管理組合が修繕計画を策定し、特に大掛かりな工事には大規模修繕工事という名前が付けられます。

この工事には、外壁の補修や防水処理、シーリングの更新、鉄部の塗り替え、給排水管の更新などが含まれ、主に共用部分に焦点を当てています。

大規模修繕工事は時間と費用がかかるため、事前の計画と準備が極めて重要です。

「修繕」と「改修」の違い

「修繕」は、建物が元々の建築基準に従って提供した機能や性能を取り戻すことを目的とした工事を指します。

これには、劣化や損傷した部分の修理や部品の交換を通じて、建物を安全かつ問題なく利用可能な状態に戻す作業が含まれます。

マンションでは、日常的に発生する小さな不具合を解決するための定期的な小規模修繕が行われます。

さらに、十数年に一度、建物全体の長期的な維持を目的とした大規模な修繕が計画され、これを大規模修繕工事と呼びます。

一方、「改修」は、単に既存の機能や性能を維持または回復するだけでなく、建物の機能や性能を向上させ、より快適な住環境を提供することを目指す工事です。

年月が経過するにつれて、生活環境やライフスタイルが変化し、建築材料や設備技術も進歩します。

これにより、改修工事では基本的な修繕を超えて、設備のアップグレードや性能の向上を図り、現代の建築基準に合わせてマンションをアップデートします。

これは住みやすさを増すだけでなく、不動産の資産価値を維持または向上させる効果も期待できます。

関連記事:マンション修繕工事が「うるさい」と言われないための対策|騒音の種類も解説

マンション大規模修繕工事の工事期間

マンション大規模修繕工事の工事期間

マンションの大規模修繕工事の期間は、その規模によって大きく異なります。

例えば、50戸程度の小規模なマンションの場合、工事の着手から完了まで約3ヶ月から4ヶ月が一般的です。

一方で、100戸程度の中規模なマンションでは、工事期間は約6ヶ月から8ヶ月を要することが多いです。

また、工事の実施に先立ち、計画段階から着工開始までには通常1年から1年半の準備期間が必要とされています。

この期間には、詳細な調査、設計、予算計画、業者募集、入札、契約などのプロセスが含まれます。

このように、大規模修繕工事は単なる建築作業ではなく、計画的かつ段階的なプロジェクト管理が求められる複雑なプロセスです。

2回目以降の工事期間

2回目以降のマンション大規模修繕工事は、初回の修繕時と比較して、より多くの工事項目が含まれ、より複雑な作業が必要になることが一般的です。

これにより、工事の総期間は初回よりも長くなる傾向があります。

屋上の防水工事に関して、初回では簡単な補修で済ませることもあり、後続の修繕では、完全な撤去や交換が必要になる場合があります。

これらの追加作業により、修繕工事の期間が1回目より長くなることも予測しておくことが重要です。

具体的な倍率で期間が延びるとは限りませんが、初回の修繕に比べて、より長い時間がかかる可能性があると理解して計画することが望ましいです。

関連記事:大規模修繕の周期は12年~15年|その理由と工事期間中の制限事項について解説

大規模修繕の流れ

大規模修繕の流れ

大規模修繕の流れは以下のとおりです。

  1. 管理組合内での体制づくり
  2. 工事の発注方式の決定
  3. 建物診断
  4. 実施時期・工事内容の検討
  5. 施工会社の選定
  6. 総会の開催
  7. 工事説明会
  8. 着工
  9. 引渡

順番に解説します。

管理組合内での体制づくり

マンションの大規模修繕工事においては、効率的な管理と専門的な対応を確保するために、「修繕委員会」の設置が推奨されています。

この委員会は、理事会の諮問委員会として活動し、工事の準備から完了までのプロセスを専門的に扱います。

通常、理事会はマンションの日々の運営業務を管理していますが、大規模修繕工事の準備が加わると、業務量は格段に増加します。

ここで修繕委員会の役割が重要となり、工事の具体的な内容の検討、施工会社との打ち合わせ、工事進捗の管理などを担当します。

これにより、理事会は過度な負担なく、通常業務と工事の両方を効果的に進行できます。

修繕委員会は最終的な決定を理事会に提案する役割を担うため専門知識が不可欠です。

過去に大規模修繕工事の経験がある方や、建築分野に精通している方をメンバーに迎えることが望まれます。

このような体制を整えることで、マンションは長期的な維持管理に向けた適切な策を講じることが可能となります。

工事の発注方式の決定

大規模修繕工事には専門的な知識が必要であり、そのため多くの場合、工事の企画段階から終了まで外部の専門家が関与します。

工事の発注にはいくつかの方法がありますが、「責任施工方式」、「管理会社主導方式」、「設計監理方式」が主な形態です。

責任施工方式では、管理組合が直接施工業者と契約を結びます。

一方、管理会社主導方式では、管理組合が管理会社に工事を委託します。

設計監理方式では、施工業者とは別に、専門のコンサルタントが設計を担当し、その指示に基づいて施工が行われます。

この間、コンサルタントは管理組合の代理として工事の監督も行い、専門家としての見地から工事を進行させます。

このようなプロセスにより、大規模修繕工事は効率的かつ専門的に進行することが保証されます。

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建物診断

建物の修繕を計画する際、最初に行うべきは徹底した建物診断です。

選ばれたパートナーと共に、専門の調査員が建物を訪れ、詳細な調査を実施します。

この段階で、建物に現れているさまざまな変化を観察し、劣化の程度や修繕が急を要する箇所を目視及び機械を用いて確認します。

得られた調査結果は、修繕のスケジュールや必要な工事の範囲を決定するための重要な基準となります。

適切な建物診断を行うことで、修繕計画がより精確に、そして効果的に進行することが可能です。

建物の現状を把握し、適切な修繕計画を立てることが、大規模修繕工事の成功への第一歩となります。

実施時期・工事内容の検討

建物診断の結果を受けて、次に考慮すべきは適切な工事の実施時期と内容です。

特に劣化が顕著な箇所は、早急に修繕計画に取り入れることが重要です。

一方で、比較的状態の良い箇所は、次の大規模修繕まで持続可能な措置を施すことで、コストを効率的に管理することが可能となります。

こうしたバランスを取りながら、資金を活用して住民から要望が多い改良工事に充てることも考慮されるべきです。

例えば、手すりの設置や自動ドア、オートロックなどの安全性や利便性を高める工事は、住民の生活の質を向上させ、工事に対する満足度を高めることが期待されます。

これらの施策により、建物の長期的な価値を保ちつつ、住民のニーズに応える修繕計画を策定することが大切です。

施工会社の選定

設計と予算が固まった後、次のステップは施工会社の選定です。

この過程では、通常、複数の施工会社から見積もりを取り、それぞれの提案を比較検討します。

施工会社の公募は、専門誌やインターネット、さらにはマンションの掲示板を通じて行われることが多いです。

最初の書類選考を通過した数社に対しては、「ヒヤリング」と称されるプレゼンテーションの機会を提供し、そこで各社から具体的な工事計画、組織体制、そしてアフターサービスの詳細について説明を受けます。

このプロセスを通じて、最も適した施工会社を選ぶことができるため、質の高い修繕工事を確保することが期待されます。

このように適切な施工会社を選定することは、工事の成功を左右する重要な要素です。

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総会の開催

大規模修繕工事の計画が具体化した段階で、次に進むべきは組合員を対象とした総会の開催です。

この総会では、修繕工事の目的、実施される具体的な工事内容、工事の開始時期、所要期間、選定された施工会社、予想される費用など、工事計画の詳細を組合員に報告します。

この場で組合員からの賛成を得られることで、初めて工事の正式な発注が可能になります。

総会での承認は、工事計画の実行を進める上で必須のプロセスであり、透明性と理解の促進に寄与します。

この会議を通じて、住民間のコミュニケーションを強化し、計画に対する共通の理解を築くことが大切です。

工事説明会

大規模修繕工事の実施が組合員総会で承認された後は、選定された施工会社と正式に契約を結び、工事の準備フェーズに移ります。

工事開始の約1ヶ月前には、組合員および居住者向けに工事説明会を開催します。

この説明会では、工事のスケジュール、具体的な作業内容、安全管理の重要性、そして日常生活への影響について詳しく説明することが求められます。

住みながら行われる大規模修繕では、居住者の理解と協力が不可欠です。

説明会でのフィードバックや懸念事項は、施工会社やプロジェクトのパートナーと共有し、住民の日常生活に最小限の影響を与えるよう努めることが重要です。

このようなコミュニケーションの取り組みは、工事のスムーズな進行と居住者の満足度を高めるために不可欠です。

着工

工事説明会および近隣への挨拶を終えた後、大規模修繕工事の着工が開始されます。

事前に詳細な施工計画を策定していても、実際に足場を組んで施工箇所を直接確認すると、予期せぬ不具合が見つかることがあります。

工事期間中は、理事会や修繕委員会、設計事務所、施工会社との間で定期的な打ち合わせを行い、発生した問題の確認、工事の進行状況、住人の要望などを共有します。

これにより、工事が円滑に進むよう適切な調整と意見交換が行われます。

このプロセスは、修繕工事を成功に導くための鍵となり、住人の生活の質を保ちながら安全かつ効率的に工事を進めることを可能にします。

引渡

工事が順調に進行し終盤に差し掛かると、竣工検査が行われます。

この検査は、足場がまだ設置されている状態で実施され、管理組合、設計事務所、施工会社が共に施工箇所を精査します。

問題が発見された場合は、是正工事を実施し、その後再検査を行って全てが仕上がり基準に達していることを確認します。

竣工検査の完了と共に工事も終了し、竣工及び引渡しの段階に移ります。

竣工時には、工事の詳細を記載した竣工図書を受け取ります。

この竣工図書は、将来的な維持管理に不可欠な資料であり、重要な記録として保管する必要があります。

この文書は、マンションの長期的な管理計画を策定する際にも参照されるため、大切に取り扱うことが推奨されます。

マンションを大規模修繕する費用の相場

マンションを大規模修繕する費用の相場

結論として、大規模な修繕では、一戸あたり75~125万円の費用がかかります。

令和3年に国土交通省が実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、半数以上が一戸あたり75万円以上の費用を負担していることがわかります。

参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査」

マンションの大規模修繕時の注意点

マンションの大規模修繕時の注意点

マンションの大規模修繕時の注意点は以下のとおりです。

  • 施工中のクレームを防止する
  • 施工状況を確認する
  • 「所有者」意識を持つ

順番に解説します。

施工中のクレームを防止する

大規模修繕工事中に最も頻繁に寄せられる住民からのクレームは、「音」と「臭い」に関するものです。

特にマンションが初めて大規模修繕を経験する場合、居住者にはこれまで未経験の環境変化が起こります。

工事中、バルコニーに足場が組まれ、メッシュシートで外界が遮られ、様々な作業者が出入りし、普段は聞こえないような騒音や異臭が発生することがあります。

これらの工事活動は、防水や塗装など必要不可欠な作業であり、しばしば数ヶ月間続く非日常的な状況を引き起こします。

このため、工事の透明性を確保し、住民の理解を深めることがクレーム対策としても極めて重要です。

工事前の説明会や、工事進行中の定期的な情報提供、作業内容の詳細な案内は、工事の正確な理解を助けるだけでなく、予期せぬ不便や不快感から生じるクレームを最小限に抑えるためには、十分な配慮が求められます。

施工状況を確認する

騒音や施工プロセスの進行状況の管理に加え、工事が完了した後の建物の状態が施工前に比べて向上しているか、また不備がないかを確認することも重要です。

これは「所有者」としての責任であり、理事会や修繕委員会は、この役割を適切に果たすために、毎月の施工状況の報告を受け、その内容を精査することが求められます。

施工の進行によっては、作業の手順や順序が変更されることがあり、また施工中に予想外の状態の改善や悪化が発見されることもあります。

このような変更が生じた場合、追加工事の必要性や費用の清算の有無についても確実にフォローアップする必要があります。

これらの確認作業は、施工業者に対して正しい姿勢で作業を行うよう促す効果もあり、プロジェクト全体の品質保証に寄与します。

「所有者」意識を持つ

施工前にはアフターサービスの内容をしっかり確認し、施工時および完了後には理事会や修繕委員会が居住者からのフィードバックを得るためアンケートを実施します。

これにより、居住者の小さな意見も収集し、必要に応じて施工業者に適切な対応を依頼することが可能です。

修繕直後は通常、外観や機能性が向上しており、すぐに問題が発生することは少ないですが、数ヶ月から一年後には意外な問題が生じることもあります。

そのため、不具合が発生した際に迅速に対応できるよう、大規模修繕瑕疵保険に加入することも有効な対策の一つです。

このような前向きな取り組みは、長期的な建物の維持管理と居住者の安心に寄与します。

まとめ【マンション大規模修繕工事の期間を把握しましょう】

今回は、工事期間の概要と併せて、大規模修繕の流れやマンションを大規模修繕する費用の相場、マンションの大規模修繕時の注意点について解説しました。

大規模修繕の流れは以下のとおりです。

  1. 管理組合内での体制づくり
  2. 工事の発注方式の決定
  3. 建物診断
  4. 実施時期・工事内容の検討
  5. 施工会社の選定
  6. 総会の開催
  7. 工事説明会
  8. 着工
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